水月通信

趣味道楽に勤しむ水月夢名(みづきむな)が発信する通信。

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Moonlight talk

前回の小説の掲載から、約三ヶ月。やはり、創作に一番時間がかかる…。
今回は、ずっと暖めていた「月」を使った小説である。月は昔から気になり胸騒ぐ存在であった。これからもこれをモチーフに書いていけたらと思う。

「大学入学おめでとう、これ、ずっと欲しかったんでしょ?」
気軽に放られた箱は、両手で抱えられる小ささ。その薄さで、中身が分かった。期待に胸膨らませて、包装もされてない無骨な箱を開けた。
中には、片手に乗る位の、小さな機械がひんやりと輝いていた。
輝きも固く金属質な、メタリックシルバーの携帯電話。
「お姉ちゃん、ありがとー!」
これをくれたのは、お父さんでもなくお母さんでもなく、お姉ちゃん。
去年、大学を卒業してお金が少し自由になったらしく、あっさりと渡してくれた。高校生だった頃から、ずっとお母さんにおねだりしては、
『まだ必要ありません』
って、あっさり断られてたのを覚えてくれてたんだ。
やっぱり持つべきは、頭の堅い親より年の近いお姉ちゃんだね。
「アンタも花の大学生だもんね、」
でもね、これはちゃんと言っておかないと、とお姉ちゃんが続けた。
「未成年のアンタが携帯を持つには、両親の承諾が必要なんだよ、ちゃんとお母さんにもお礼を言うんだよ」
視線は、台所で晩御飯の支度をしてるお母さんの背中に向けつつ、そう。
「そっか…」
信用、してくれたのかな?
それとも諦めたのかもしれない、毎日毎日おねだりしてたし。
どっちでもいいや。
「ありがと!お母さん、お姉ちゃん!」


電話は、片手に収まるくらいの、本当に小さな機械だった。
だけど、通話ボタンを押すと、ツーっという誰とも繋がってない音が届いた。
これで、どこでも繋げる事が出来る。
「お母さん!ちょっとだけ出掛けてくるー!」
玄関に放ってあったサンダルを引っ掛けると、そのまま飛び出した。
外は夜。浮かぶ月は満月。
とても大きくて、手を伸ばせば届きそうなのに、絶対届かない。
金色…、なんだけど、ぎらぎらと眩しくない。優しくてまるい光。まるではちみつを固めたみたいな輝き。
携帯にも光が当たり、同じ色に染まる。
そらで覚えてる番号を入力。090で始まる、九つの番号。昨日までは、家の電話からプッシュしてかけてたから、いつしか指が覚えてしまってた。
『…はい?誰』
ちょっと眠たげな、低い声。慣れない内は怖かったけど、今はこれが普通の声だと分かってるので、そのまま会話を続ける。
「うん、わたし!」
『は?これ家の番号じゃねーじゃん』
「うん!携帯やっと持てたんだ!」
『へえ、初めての携帯で電話か。悪くねえな』
ちょっと生意気な言葉遣いは、彼の癖みたいなもの。言葉の向こうに笑顔が浮かんで見える。
「何か、かけたい時にどこからでも、ってのは嬉しいね。ねえねえ、今外からかけてるんだよ!」
『おま…、もう夜だぞ。あっぶねえな、家入れよ』
「だいじょうぶ、家の側だもん。それに月がすっごいキレイなんだよ」
『月がキレイ…、らしくねえな』
声のトーンが、上がった。笑ってるな、悔しいな。
「外出てみなさいよ!本当スゴイんだから」
『ふうん…、ちょっと待ってろ、よ…』
向こうの声が揺れた。きっと窓まで移動してるんだ。
『…へえ、今日満月だったのか?眩しいくらいだな』
「うん!大きくて丸くて、キレイだよね!」
『オマ…、どこのガキだよ。もっと言い方ってもんもあるだろーに』
耳元で聞こえる、苦い笑い声。直に話すより近く感じるのは、きっと耳元から聞こえる声のせいだよね。
「…月、見える?」
『?ああ、見てるぜ、くっきりと。』
隣にいないのに、聞こえる声。隣にいないのに、同じに見える丸い月。
まるで、声と月が、彼と繋いでくれているみたい。
「携帯っていいね。」
どこにいても繋がる事が出来るから。一緒に月を眺める事が出来るから。
手にした携帯電話は、相変わらず金色の光に包まれている。
そこから、見えない金色の月の糸が、彼まで繋げているみたいだった。
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水月夢名(みづきむな)

Author:水月夢名(みづきむな)
サークル:watermoon
水月夢名の同人情報の
発信基地になりつつあります。
最近一番ホットなのは
嵐の五人です。
連絡先
munamiduki☆yahoo.co.jp
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